作品名:博士の愛した数式
作者名:小川洋子
出版社:新潮社

レビュー
映画化までされ、多くの注目を集めた話題作!

何度も映画を見たいと思ったのですが、
実は私はあまり映画が好きではないので、
映画を見る代わりに小説を読もうと決意した一冊です。

この作品は非常にハートフルです。

80分しか記憶の持たない『博士』と、
その家政婦である主人公とその息子の3人を、
主人公の目線で描く心温まる話です。

博士は数学の元学者だったのですが、
過去の事故によって、記憶に障害ができてしまいます。

そのため、現在は義理の姉とともに暮らしています。
彼はいつもメモを背広にクリップで留めていて、
自分の記憶の代わりにしているので、
彼が動くとカサカサと音がします。

そんな博士ですが、
気難しい性格のために家政婦を何度も取り替えてきました。

主人公が家政婦として来ても博士はあまり受付はしなかったのですが、
息子がいることを話すと博士は態度を一変して、
子供を一人で遊ばせるわけにはいかないと言って、(主人公はシングルマザー)
博士の家に連れてくるように言います。

博士は子供が好きなので、
息子を通じて、博士と仲良くなります。
(記憶が消えるたびに簡潔に、傷つけないように、説明します。)

数式と言っても、あまり気難しいものではなく、
なるほど!と言ってしまいそうなものばかりです。

物語に度々登場するものだと、
主人公の誕生日の2月20日、『220』と、
博士が論文で学長賞を獲得した文字時計の番号の284号、『284』が、
友愛数の関係にあるといったような感じです。

友愛数は難しく聞こえますが、
内容は非常に簡単で、
自信を除いた約数(その数を成り立たせる積数)の和が
他方の数に等しくなるというものです。

220{1,2,4,5,10,11,20,22,44,55,110}→和が284
284{1,2,4,71,142}→和が220

ちなみに、所謂、”人が死んじゃう話”ではありません。
確かに博士は最後の場面で、亡くなることが描かれていますが、
死を悲しむ場面は出てきません。

むしろ、3人の間の友情を描く話です。

私の読書ジャンルは非常に偏っているので参考にならないかもしれないですが、
最もハートフルだと思った作品の一つです。

そして、起承転結もしっかりとしていて文章も堅苦しくないので、
非常に読みやすいです。
読書経験があまりない方にもオススメの一冊です。

以上です。



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